脈々WEB版 2020年冬号

教えてドクター!

脳血管疾患とその予防について教えてください。

脳卒中について正しい知識を持ちましょう

 

要介護になった原因の円グラフ

 

 日本人の脳疾患でいちばん多いのは脳卒中です。脳卒中は脳の血管の病気で、大きく3つに分類されます。まず、脳の血管が「詰まる」ことで起きる症状が脳梗塞(のうこうそく)、そして「破れる」ことで起きる症状が脳内出血で、破れた場所によって脳出血か、くも膜下出血かに分かれます(上図参照)。
 厚生労働省の調査によると、高齢者が要介護の状態となる主な原因の第1位は脳血管疾患(脳卒中)で、同じく脳の疾患である認知症も含めると、なんと全体の34%以上を占めています。
 脳卒中は一度発症すると「死につながる」、「寝たきりになる」という怖いイメージのある病気ですが、心身共に健康な人に突然起きることはごく稀で、たいていは何らかの病気をすでに抱えている人に起こります。問題は、病気であることに自覚がなく、治療を行わないまま長く放置してしまうことにあります。

 

脳卒中の大まかな分類

脳血管疾患の予防は生活習慣の改善が大切

 

 脳卒中には予備軍と呼べる人がたくさんいます。これは社会問題にもなっていることで、比較的若い30〜40代の働き盛りの方が脳内出血を起こす症例が増えています。  原因は塩分過多の食事や、お酒の飲み過ぎが引き起こす高血圧で、自覚症状のないまま高血圧の治療を放置し続けた結果として、脳卒中を発症しています。脳の動脈は血圧が高くても簡単には破れませんが、高血圧が長く続くことで動脈が少しずつ傷み、最後には破れるか、詰まってしまうのです。
 高血圧のほかにも、糖尿病の人は、健康な人よりも脳梗塞の発症率が高いことがわかっています。糖尿病は動脈硬化の原因の一つになり、血液が汚れて流れにくくなるからです。
 また、悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールの高い人も全身の動脈硬化を起こしやすく、脳梗塞(特にアテローム血栓性梗塞)のリスクを抱えていると言えます。検診などで血圧やコレステロールの数値が悪い場合には、自覚症状がなくても放置せず、早期に治療を行うことがとても大切です。
 高血圧も糖尿病も生活習慣病ですから、日頃の生活、特に運動習慣と食生活に気をつけることで予防も改善も十分にできます(下記参照)。脳の健康のための「脳トレーニング」などもありますが、生活習慣の改善に勝る予防はありません。
 私の病院には、めまいや偏頭痛で悩まれている方も多く来院されます。めまいも頭痛も体調の変化のサインですから、必ずしもすぐに病気と結びつくわけではありません。原因の多くはストレスや睡眠不足、運動不足などで、ここでも生活習慣の改善が大きなポイントになっています。時々サボっても構わないので完璧を目指さずに、健康的な食生活と運動を少しずつでも心がけてみてください。
 但し、長期間続く頭痛や、寝込んでしまうほどめまいが酷い場合には、お近くの専門医へのご相談をおすすめします。

 

脳血管疾患予防のための食卓

お話を伺ったのは…

伊佐内科クリニック 院長
伊佐 勝憲(いさ かつのり)先生

沖縄県生まれ。琉球大学医学部医学科卒。医学博士。ウェイクフォレスト大学高血圧血管病研究所、琉球大学医学部附属病院第三内科勤務を経て、2013年に伊佐内科クリニックを開院。
日本内科学会総合内科専門医および指導医。
日本神経学会認定神経内科専門医および指導医。
日本脳卒中学会認定専門医。

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