脈々WEB版 2019年冬号

特集

大宜味村 長寿のひみつ

沖縄本島北部の「やんばる」と呼ばれる地域に位置する大宜味村。青い海と深い緑に囲まれ、豊かな伝統文化が息づいている村です。

〈今号の表紙〉 大宜味村の長寿を支えているのは、地元で採れた海のものと山のものをふんだんに使った日頃の食事です。昔ながらの家庭料理を再現した「ぶながや定食」を、特集内でご紹介しています。 撮影:仲程長治  

 

海と緑に囲まれた長寿の里、大宜味村。

 私の祖母は芭蕉布で有名な大宜味村喜如嘉の出身で、子どもの頃は毎年墓参りに訪れていました。親戚やその近所の家には糸車や機織り機があり、村の女性たちが集まってゆんたく⦅おしゃべり⦆をしながら糸を紡いだり、機織りをする風景が見られました。出される食事はアーサやモーイといった海藻や野草など身の回りで採れる食材を使ったもの。帰りにはシークヮーサーの実を食べきれないくらいたくさんお土産に持たせてくれたことを思い出します。
 今でも大宜味村を訪れると、元気に働くお年寄りの姿をよく見かけます。朝は早い時間から畑仕事へ、暑くなる日中は内職をして、涼しくなったらまた畑へ。太陽にリズムを合わせた規則正しい暮らし。そうした生活も、ご長寿の秘訣なのかもしれませんね。
 今号では、長寿の里として知られている大宜味村の「長寿のひみつ」をご紹介します。

代表取締役 名護健

代表取締役 名護 健


 

長寿のひみつ ①

伝統文化と行事

 

サバニと呼ばれる船に乗って競漕する男性たちを、村の女性たちが太鼓を打ち鳴らして出迎えます。

那覇市から北に約87㎞、沖縄本島北部の「国頭郡」に属する村で、山、海、川のある豊かな自然環境に恵まれた17の集落に約3,100人(2018年9月現在)が暮らしています。芭蕉布などの伝統工芸や、「塩屋湾のウンガミ」に代表される伝統行事、そしてシークヮーサーの特産地としても知られていますが、中でも「長寿の里」として、昔ながらの生活文化が国内外からの注目を集めています。

 

伝統文化と祭祀を支える 役目と誇りが生き甲斐に。

 大宜味村を代表する年中行事ウンガミ(海神祭)は、毎年、旧盆明けの最初の亥の日に村内各地で執り行われる豊年祈願の祭祀です。中でも、風光明媚な内海で行われる「塩屋湾のウンガミ」は、女性たちが半身を海に浸かりながら、男性たちが漕ぐ船を迎える勇壮なウガンバーリー(船漕ぎ競争)が圧巻で、多くの見物客で賑わいます。
 祭りに参加しているお年寄りたちの晴れやかな表情を見ると、そこには、地域の伝統と文化を次世代に受け継いでいこうとする使命感と、ふるさとへの愛が溢れています。
 旧暦に沿って行われる年中行事を通じて地域社会と関わり、自らの役割を果たすことが、お年寄りたちの大きな生き甲斐になっているのです。

 

1997年に国の重要無形民俗文化財に指定された、塩屋湾のウンガミ。毎年多くの見物客で賑わいます。

 

子どもからお年寄りまでが参加し、地域が一丸となって五穀豊穣、無病息災を祈願する熱気に溢れています。

 

約500年の歴史があるウンガミ。祭祀の中心になるのは、古くからの習わしをよく知るお年寄りたちです。


 

長寿のひみつ ②

地産地消の食生活

 

ぶながや定食

古堅直子さんがつくる元祖・ぶながや定食。ぶながやとはガジュマルの木に棲む精霊のこと。

 

身の回りで採れたものを知恵と工夫でごちそうに。

 大宜味村のお年寄りたちの食生活は、昔ながらの沖縄の家庭料理です。強い陽射しをたっぷり浴びて育ったミネラル豊富な緑黄色野菜や海藻類を常食し、豚肉や豆腐などの良質なたんぱく質もしっかりと摂っています。
 また、味付けはかつおだしや豚だしを使うため塩分は控えめで、野菜は煮込んだり炒めたりすることで、たくさんの量を食べていることも大きな特徴です。
 もうひとつ、大宜味村の食卓に欠かせない食材がシークヮーサーです。熟れた実は生食やジュースに、酸味の強い青い実は酢の代わりとして、刺身や和え物などに使います。疲労回復に効果的なクエン酸やビタミンCを含んでいる他、がん抑制効果が期待されるノビレチンという成分も含まれており、「緑の宝石」として注目を集めています。
 近年は周辺にコンビニや大型スーパーができ、村民の食環境が変化しつつあります。農園民宿「島の上ファーム」を営む古堅直子さんは、食の変化を危惧する一人です。「目先の便利に流されず、先人たちの知恵と工夫が詰まった伝統料理を大切にしたい」という思いを込めて「元祖・ぶながや定食」をつくり、国内外から長寿食を求めて訪れる人たちをもてなしています。「海のものと山のものをバランスよく食べる大宜味の食こそ、長寿の源です」と古堅さんは言います。

 


 

長寿のひみつ ③

生涯現役の心意気

 

がんじゅう教室

「がんじゅう教室」に集まった塩屋の皆さん。最高年齢100歳とは思えないほどの元気とパワー!
ちなみに…「女性たちのおしゃべりに圧倒されてしまうから」という理由で、男性は別日に集まるそうです。

 

地域で助け合いながら仕事も遊びも楽しんで。

 塩屋の中央公民館で定期的に開催されている「がんじゅう⦅元気⦆教室」にお邪魔しました。
 65歳以上であれば誰でも参加できるというこの教室は、月1〜2回のペースで公民館に集まって健康状態をチェックしたり、健康講座などを開いているミニデイサービスです。この日は体操教室が開催されましたが、集まった皆さんのハツラツとした表情としっかりとした足腰、取材陣にも「どこから来たね?」「これは何の撮影?」「あなたは若いんだから何でもやりなさいよ!」と積極的に話しかけてくる大らかさと、底抜けのパワーに驚かされました。
 大宜味村のお年寄りの多くは一人暮らしか、ご夫婦のみの世帯ですが、家庭菜園で汗を流したり、隣近所の友人たちとカラオケやグラウンドゴルフなどのクラブ活動を楽しんだりと、活動的な日々を過ごしています。
 また、島外や都市部に住んでいる子どもや孫たちとの交流も盛んで、地域社会から孤立してさみしく暮らしているということはありません。お年寄り自身が常日頃から「生涯現役」を心がけて適度に働き、地域の行事にも積極的に関わること。そしてその姿を地域や家族がしっかりと見守り、ゆいまーる(相互扶助)の精神で支えているのです。

 

 


 

長寿の極意

それは笑顔。

 

長寿の極意。それは笑顔。

自然とふれあい、人とふれあいながらのんびりと過ごしています。

 

「道の駅 おおぎみ」にある長寿の村宣言碑。 その碑文にも長寿の秘訣が刻まれています。

 

『笑う門には福来る』と一度きりの人生を謳歌。

 大宜味村でお会いしたご長寿の皆さんに「長寿の秘訣は何ですか?」と尋ねてみると、「カラオケで歌うこと」「人と仲良く会話すること」「何にでも興味をもつこと」「畑で仕事をすること」といった答えが返ってきました。その中に共通していたキーワード、それは「笑顔」です。
 ある方は、「人間生きている限り現役。生きていれば良い事もあれば悪い事もある。けれど笑ってれば、たいていのことは大丈夫」と、人生の達人としてのアドバイスをくれました。
 「笑う」ことが心身に与える影響について最近の研究では、免疫力がアップするだけでなく、脳のはたらきが活性化し、血行が促進され、自律神経のバランスが整うとも言われています。何よりも、笑うことで脳内ホルモンであるエンドルフィンが分泌され、幸福感がアップします。
 塩屋の集落を歩くと、子どもからお年寄りまで、たくさんの笑顔に出会います。道ゆく人が見知らぬ観光客であっても笑顔であいさつし、声をかけ合うなどして、無言ですれ違うことはありません。
 よく食べ、よく働き、よく遊び、そしてよく笑うこと。一度きりの人生を「楽しまないと損」とイキイキと謳歌している大宜味村のご長寿たちの生き方は、人生にとって何が大切かを、私たちに教えてくれます。

 

楽しいことは友人たちと共有。笑顔がもっと増えます。

楽しいことは友人たちと共有。笑顔がもっと増えます。

 

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大宜味村 長寿のひみつ

沖縄本島北部の「やんばる」と呼ばれる地域に位置する大宜味村。青い海と深い緑に囲まれ、豊かな伝統文化が息づいている村です。

〈今号の表紙〉 大宜味村の長寿を支えているのは、地元で採れた海のものと山のものをふんだんに使った日頃の食事です。昔ながらの家庭料理を再現した「ぶながや定食」を、特集内でご紹介しています。 撮影:仲程長治  

 

海と緑に囲まれた長寿の里、大宜味村。

 私の祖母は芭蕉布で有名な大宜味村喜如嘉の出身で、子どもの頃は毎年墓参りに訪れていました。親戚やその近所の家には糸車や機織り機があり、村の女性たちが集まってゆんたく⦅おしゃべり⦆をしながら糸を紡いだり、機織りをする風景が見られました。出される食事はアーサやモーイといった海藻や野草など身の回りで採れる食材を使ったもの。帰りにはシークヮーサーの実を食べきれないくらいたくさんお土産に持たせてくれたことを思い出します。
 今でも大宜味村を訪れると、元気に働くお年寄りの姿をよく見かけます。朝は早い時間から畑仕事へ、暑くなる日中は内職をして、涼しくなったらまた畑へ。太陽にリズムを合わせた規則正しい暮らし。そうした生活も、ご長寿の秘訣なのかもしれませんね。
 今号では、長寿の里として知られている大宜味村の「長寿のひみつ」をご紹介します。

代表取締役 名護健

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