エシカルな沖縄

特集

エシカルな沖縄

脈々2022冬号表紙

「糸芭蕉」の、糸になる繊維以外の残り部分で作られた芭蕉紙。自然の恵みを余すところなく活かす沖縄の知恵のひとつです。

〈今号の表紙〉西表島、船浦湾から望む朝日。この島に来ると必ずと言っていいほど、この場所から朝日を撮影している。夜の帷と朝の光が混じり合う、自然の循環が垣間見える時間。穏やかな凪の海に川の流れが注ぎ込み、澄みきった空気が漂っていた。撮影:仲程長治

 

私たちにできるエシカルなこと

 「エシカル」と初めて耳にした時はピンとこなかったのですが、人・社会・地域・環境に配慮した取り組みや意識付けを指し、私たちの普段の暮らしに大きく密着したテーマだと思います。沖縄でも古くから取り入れられてきた考え方で、琉球ガラスや染織といった伝統工芸の製法などにも深い関わりを持ちます。
 弊社では、創業当初から掲げている『「農」を起点に、人と自然が共生する社会の創造に貢献する。』という企業理念の元、20年ほど前からうるま市の自治会を対象に、自社で製造した「EM活性液」を無償で提供する活動を続けています。生ゴミに活性液を混ぜて発酵させることで家庭菜園など畑の肥料として活用でき、“廃棄物を土に還して循環させる”という取り組みです。
 また、地元の子ども支援団体と連携して、子どもたちが未来のビジョンを思い描けるよう、職業体験や農場での収穫体験を企画しています。いずれも環境保全と地域貢献の一端として、できることを模索しながら今後も取り組んでいく所存です。今号では、人の健康にも環境にも優しいエシカルな沖縄をご紹介します。

代表取締役 名護健 代表取締役 名護 健


 

ずっと昔からエシカルな沖縄

「エシカル」とは、「倫理的な」という意味の形容詞です。法律的な決まりごとではないけれど、未来を担う子どもたちのため、一人ひとりが環境や地域に配慮した行動を続けることで「持続可能な世界をつくろう」という取り組みが広がっています。

 

ずっと昔からエシカルな沖縄

 

つながりを大切にしてきた沖縄の生活文化

 人も資源も限られた島国である沖縄では、昔から「ゆいまーる」と呼ばれる相互扶助のシステムがあり、田植えや家を建てる時などに集落の人たちがお互いに助け合うことは「あたりまえ」でした。
 特に戦後は物資の不足が深刻だったため、モノづくりの原材料や食糧などの資源は可能な限り無駄なく活用し、廃品を再利用するなど様々な工夫が施されて来ました。
 また、土に還るエコな素材を使うなど自然に配慮した生活文化によって、地域社会がつながり合って循環し、沖縄の豊かな自然環境が守られてきたと言えるでしょう。

 


 

あたりまえにあった
沖縄のエシカルな生活文化

身近にある日用品や工芸品のなりたちの中にも、限りある資源を活かして循環させることを意識した、沖縄ならでのエシカルな視点が潜んでいます。

 

共用で再利用する泡盛の三合瓶

沖縄を代表する酒類、泡盛の三合瓶は、沖縄県酒造組合が共通規格の瓶として沖縄県内にある47の酒造所に卸し、共通で使用されているものです。市場で販売された後の空瓶は回収・洗浄され、各酒造所で繰り返し利用されています。
1973年に始まったこの仕組みは、かつて泡盛は量り売りが主流で、各家庭で空瓶を大切に使う文化があったために生まれました。

リターナブル:繰り返して使う

 

廃品から生まれた琉球ガラス

沖縄の伝統工芸品として人気の琉球ガラスは、戦後、駐留米軍が持ち込んだジュースやコーラの空き瓶を原料にして、米兵からの注文でパンチボールなどのカラフルなガラス製品を作ることから始まりました。
原料ガラスが安く手に入るようになった現代でも、一部の工場では手間のかかる廃ガラスをあえて使用して、資源をリサイクルする大切さを伝えています。

リサイクル:再生して使う

 

瓦職人の遊び心でつくられたシーサー

沖縄らしい風景を彩る赤瓦屋根と、そこに鎮座するシーサーもまた、沖縄ならではのエシカル文化のひとつです。1882年に、それまで禁じられていた屋根の瓦葺きが解禁され、一般家庭にも赤瓦の屋根が広がりました。屋根の瓦葺きを頼まれた職人が、作業が終わった時に余った瓦の破片や漆喰を使ってシーサーを作り、記念に屋根に乗せて家主へのお祝いにしたことが沖縄の屋根シーサーの始まりといわれています。
素焼きのシーサーよりもどこかユニークで表情豊かな漆喰シーサーですが、現在は赤瓦を使用する住宅が少なくなり、残念ながらシーサーを屋根上に乗せる風習も失われつつあります。

アップサイクル:余りもので作る

 

月桃やバナナの葉でグリーンラッピング

身の回りにある植物の葉に料理を盛りつけたり、保存したい食品を包んだりするグリーンラッピング。色鮮やかな緑が食欲をそそるだけでなく、食べ終わった後にもプラスチックゴミを出さない優れものです。
中でも、ムーチーという餅菓子を包むことでよく知られている月桃の葉には抗菌・防虫効果があり、沖縄では古くから食品の保存や虫除けなど、様々な場面で利用されてきました。
また、大きくて張りがある糸芭蕉(バナナ)の葉はお皿にぴったりで、抗酸化作用があることでも知られています。

天然の効果で食品を安全に保存し、使い終わったら自然に還る糸芭蕉(バナナ)の葉のお皿

月桃の葉で簡易にくるんだお弁当は見た目も愛らしくゴミもでません


 

はじまっています!
沖縄のエシカルな取り組み

沖縄からより良い未来をつくろうと、小さな一歩を踏み出して奮闘している人たちがいます。
島の豊かさを持続可能にすることを目標に、地域で活動を続けているエシカルなプロジェクトをご紹介します。

 

はじまってます!沖縄のエシカルな取り組み大宜味村のシークヮーサー農家さんとの出会いから始まったというプロジェクト。地域で暮らすおじぃ、おばぁの知恵もまた次世代に遺すべき宝物です

 

農産物を余さず活かして循環させる未来へ

 シークヮーサーの果汁を絞った後の果皮や、果実の収穫後に廃棄されているパイナップルの葉など、農業の現場で活用されてない作物をアイディアとテクノロジーで再生させるプロジェクトが沖縄本島北部で始まっています。
 長寿の里で知られる大宜味村との出会いから、この事業を興した株式会社フードリボン代表の宇田悦子さんは、村のおばぁから「かふうあらしみそーれ」という、「何事にも感謝をして徳を積み、孫の世でも幸せであって欲しい」という想いが込めらた言葉を教えてもらった時に「私たちがすべきことは100年先の子どもたちの幸せをつくること」と、強く実感したそう。
 食べられるものから作られているフードリボンの製品は安心・安全であることはもちろん、製造の過程でも環境に負荷をかけず、使い終わった後には土に還す「循環」の仕組みづくりを意識していることも大きな特徴です。

 

天然の効果で食品を安全に保存し、使い終わったら自然に還る糸芭蕉(バナナ)の葉のお皿パイナップル葉の繊維から作られた、土に還すことができる、生分解性のストロー

月桃の葉で簡易にくるんだお弁当は見た目も愛らしくゴミもでませんパイナップルの特産地、沖縄本島北部の東村。果実を収穫した後に大量廃棄されるパインの葉を製品化し、農家の新たな収益源に転換

 

農産物をエシカルに

島のほぼ全域が自然保護区域の西表島では、正しい知識を持った経験豊富なガイドと自然の中に入ることが大切島のほぼ全域が自然保護区域の西表島では、正しい知識を持った経験豊富なガイドと自然の中に入ることが大切

 

旅先に思いやりを持つ「エシカルな旅」を提唱

 世界自然遺産に登録された西表島。イリオモテヤマネコに象徴される豊かな自然を求めて多くの観光客が訪れる島ですが、近年では、海岸の漂着ごみやヤマネコの交通事故の増加、観光客のモラルの低下による住民生活への悪影響など、環境へのダメージが懸念されるようになりました。
 西表島の豊かな自然と文化を「明日」に継承することを目的に活動するプロジェクトUS4IRIOMOTE(アスフォーイリオモテ)では旅先の自然や暮らしに対する思いやりと敬意を忘れない「エシカルな旅」を観光客に向けて提唱。事前に現地の正しい情報を得ること、ゴミになるものを持ち込まないことなど、ツーリスト一人ひとりができる意識の変化と、小さな行動の積み重ねの大切さを広げています。

 

US4IRIOMOTE(アスフォーイリオモテ)

 

ゴミを減らすためにマイボトルやアメニティの持参を呼びかけゴミを減らすためにマイボトルやアメニティの持参を呼びかけ

砂浜にある小さなプラスチックゴミを拾うことも提唱しています砂浜にある小さなプラスチックゴミを拾うことも提唱しています

 


 

明日を変える!
沖縄のエシカルなプロダクト

環境にやさしい商品を選ぶ“エシカルな買い物”は消費者にもできる小さな一歩。作り手の想いが詰まった商品をどうぞ。

 

サンゴ礁を守りたいという気持ちが生んだ日焼け止め

従来の日焼け止めには、サンゴにダメージを与える可能性がある化学物質が含まれていることを知った沖縄の女性起業家が開発した。自然由来の成分で紫外線をブロックし、海の環境への悪影響を抑えることができます。

サンゴ礁を守りたいという気持ちが生んだ日焼け止め

 

水と木の物語を伝える琉球松のポストカード

やんばる産の琉球松を厚さ0.1mmにスライスした木目が美しい木の紙に、葛飾北斎が想像で描いたという、「琉球八景」を印刷したポストカード。沖縄の林業の活性化によって水と森を守ることを目的に作られた商品。

水と木の物語を伝える琉球松のポストカード

 

さとうきびの搾りかすが新時代のデニムに変身

生産量が年々減少しているさとうきび産業の再活性化を目指して、搾りかすの「バガス」をパウダー化してデニム生地に加工、沖縄の職人らが製品化しているブランド。シェアリングサービスやオーダーメイドも展開しています。

さとうきびの搾りかすが新時代のデニムに変身

 

パイナップルの芯がナチュラルなスイーツに

沖縄県産のパイナップルを加工する際に余った「芯」の部分を、そのままドライフルーツにした無着色のナチュラルスイーツ。ほのかな甘みで食べやすい一口サイズなのもうれしい。沖縄の観光名所で人気のお土産です。

さとうきびの搾りかすが新時代のデニムに変身

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エシカルな沖縄

脈々2022冬号表紙

「糸芭蕉」の、糸になる繊維以外の残り部分で作られた芭蕉紙。自然の恵みを余すところなく活かす沖縄の知恵のひとつです。

〈今号の表紙〉西表島、船浦湾から望む朝日。この島に来ると必ずと言っていいほど、この場所から朝日を撮影している。夜の帷と朝の光が混じり合う、自然の循環が垣間見える時間。穏やかな凪の海に川の流れが注ぎ込み、澄みきった空気が漂っていた。撮影:仲程長治

 

私たちにできるエシカルなこと

 「エシカル」と初めて耳にした時はピンとこなかったのですが、人・社会・地域・環境に配慮した取り組みや意識付けを指し、私たちの普段の暮らしに大きく密着したテーマだと思います。沖縄でも古くから取り入れられてきた考え方で、琉球ガラスや染織といった伝統工芸の製法などにも深い関わりを持ちます。
 弊社では、創業当初から掲げている『「農」を起点に、人と自然が共生する社会の創造に貢献する。』という企業理念の元、20年ほど前からうるま市の自治会を対象に、自社で製造した「EM活性液」を無償で提供する活動を続けています。生ゴミに活性液を混ぜて発酵させることで家庭菜園など畑の肥料として活用でき、“廃棄物を土に還して循環させる”という取り組みです。
 また、地元の子ども支援団体と連携して、子どもたちが未来のビジョンを思い描けるよう、職業体験や農場での収穫体験を企画しています。いずれも環境保全と地域貢献の一端として、できることを模索しながら今後も取り組んでいく所存です。今号では、人の健康にも環境にも優しいエシカルな沖縄をご紹介します。

代表取締役 名護健 代表取締役 名護 健

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